新型コロナウイルスの新規感染者は7月6日、全国で4万人を超えた。1週間前から約1万7000人、「“次の波の入り口”に差し掛かっている」と指摘される。ついに“第7波”がきたのか。新たな変異ウイルス「BA.5」への置き換わりが不安を呼んでいる。
◆「BA.5」 免疫すり抜ける能力 再感染の恐れも
「ワクチンなどによる免疫が徐々に低下してきていること。また、大きな要因として、新たな変異ウイルスへの置き換わりの影響が出始めているのではないかという議論があった」
6月30日、厚生労働省で新型コロナ対策を話し合う専門家会合の脇田隆字座長は、直近の感染状況について記者団にこう説明した。
専門家が懸念するのは、変異ウイルス「BA.5」への置き換わりだ。オミクロン株の中でもより感染力が強く、免疫をすり抜ける能力があるとされる。ワクチンを接種すると、ウイルスの働きを抑える中和抗体ができるが、海外では初期のオミクロンと比べ、「BA.5」だとこの抗体の強さが3分の1程度まで低下するという研究報告もある。
さらに、自然感染で作られる免疫は「BA.5」に対しては十分ではないこともわかってきた。国内で“第6波”の中心だったオミクロン株の「BA.1」と「BA.2」に感染していても、再感染する可能性がある。
◆全国各地で急速な「置き換わり」
海外の一部の国では既に「BA.5」が広がりを見せている。日本では5月に初めて確認され、東京都の検査では、6月14〜20日の1週間で「BA.5の疑い患者」が、全体の約25%を占め、1週間前と比べその割合は倍に増えた。島根県でも全体の約40%となり、全国各地で置き換わりが進みつつある。
東京都内のある医療機関の担当者は、直近10日間で入院したコロナ患者のうち半分が「BA.5」だったと明かす。この機関では「重症者はいない」としつつも、「ほぼ全員がワクチンを3回接種していて、置き換わりのスピードは『BA.2』の時よりも急速だ」と話す。
◆専門家の警鐘「今は『次の波の入り口』」
一方、新型コロナ対策にあたる政府分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は、「BA.5」の置き換わりに加え、複数の要因を指摘する。
「行動制限の緩和で人と人の接触の機会が増え、季節的にクーラーを使い換気がしづらくなっている。そこにワクチンの効果の減弱、BA.5への置き換わりも合わさっている。しばらくは、この状況が続くことを覚悟しておかなければいけない。今は“次の波の入り口”に差し掛かっている」。
◆“次の波”を抑えるには…夏休み 増える接触に注意
公衆衛生学が専門の国際医療福祉大学の和田耕治教授は今後の感染の見通しについてこう警戒する。
「接触機会の増えるお盆にかけて、それなりの感染の波が来る警戒はするべきだ。夏休みもあるのでここから感染が増える要因が増す」
そして我々がこれまで行ってきた対策を続けることが重要だと訴える。
「成人で3回目のワクチン接種を受けていない人は早めに接種を済ませること。重症化リスクの高い高齢者を中心に4回目の接種のタイミングが来れば接種をすること。特に咳や喉の痛み、発熱などの症状があれば他の人に会わない、うつさない対策をお願いしたい。1人1人がもう一度、マスクや3密の回避など感染対策を徹底することが大事だ」。
厚生労働省は5日、自治体に医療提供体制などを整備するよう通知。発熱患者などが確実に検査を受けられるように、対応できる医療機関を拡充し、検査キットを事前に配布する準備も求めた。
テレビ朝日 松本拓也(厚生労働省担当)
ニュースの評価